本当の幸い とは









弾丸が脳天を貫くだろう一秒にも満たない刹那に、走馬灯とやらが人生の総ざらいをする。
けれど、瞬きに近い時間では三人を思い出すのが、やっとだった。
あの戦場で、家族も持てずに死んで逝った者がどれ程いただろう。
あの頃だ。俺は、ろくな死に方をしないと覚悟したのは。
だが、どうだろう、この死に際は。
勿論、突然の別離だが最悪ではない。上出来だ。
最期に想ったのは愛すべき妻と娘、そして友と呼ぶには過ぎた関係の彼。
不思議な満足感が胸を満たして、自分が酷く幸福であった事に気が付いた。










fin.



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ヒューズの最期を想って。



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